D-71 ルドン「アネモネの花束」

アネモネの花束

オディロン・ルドンの生涯は、少なくとも表面的になんの波乱のない人生であった。だが、ひとつの土地の名が彼の芸術と生涯を通じて主張低音のように鳴りひびきつづけている。ベイルルバード、それはボルドーから約10キロのメドッグ地方にあるルドン家の所有地であった。この荒涼とした土地で、家族とはなれ、なかでも母親からかえりみられずに過ごした孤独な少年時代は、不可能な流刑にもひとしい。のちに芸術家へと成長していったときルドンにとって芸術は彼がベイルルバート体験を生き直し、その真の意味を求めてゆく内面の旅、あるいはもうひとつの<失われた時を求めて>となるのである。ルドンのモチーフの展開の中で、晩年の作品における花の位置は、ちょうど初期の作品郡における首一眼球のそれとほとんどシンメトリックなまでの対照をなしているように思える。そこには、才能としての造形感覚に裏打ちされた、綿密な計画が働いている。これはルドンが晩年に至っても緊張感の強い作品をつくり出している所以です。

 

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