栞の道しるべ(R1.10.1更新)

 今回の担当は・・・まるこです。

 

 第73回「読書週間」(10月27日〜11月9日)標語

 「おかえり、栞の場所で待ってるよ」

 

 この標語について、公益社団法人 読書推進運動協議会のホームページに、

 入選した水口真優子さんの言葉が書いてありました。

 

 「〈作者の言葉〉

 日々の時間と環境は、時には私を置いて行ってしまうほど

 早く過ぎ去ってしまうときもあるけれど、ほっと開いた本の世界は、

 私の帰りを待ってから進んでくれる・・・一人暮らしをはじめて、

 昔以上に本が好きになりました。」

 

  なるほど・・・忙しい中での読書、読んだところまで栞を挟み、

 次に読む時にそこを開くと、前回に開いた時の本の世界とすぐにつながります。

 

  そう思った時、ある物語を思い出しました。

 朱川湊人さんの『かたみ歌』(新潮文庫)に収録されている「栞の恋」。

 昭和42年9月、東京の下町にある昔ながらのアカシア商店街。

 飲み物をあちこちに配達する仕事をしている23歳の邦子は、時々見かける

 男性に憧れ、その男性が時々立ち読みしている古本屋に入っていきます。

 その男性が読んでいた本を棚から取り出すと、そこには、イニシャルが

 書いてある栞のような紙が挟まっていて、その男性の栞だと思い込んだ邦子は、

 彼にメッセージを書いた紙を挟みます。

 すると次に本を開いた時、返事の栞が挟まっていて、しばらく栞の文通が続きます。

 ところが、ある日邦子のお店に来たその男性は、栞のやり取りの雰囲気とは

 まるで違っていて、イニシャルも合わない・・。古本屋に行った邦子は、

 本屋の店主から意外な事実を知らされます。

 昭和19年戦時中の特攻隊の青年と邦子のメッセージが時空を超えて交差します。

 かなりネタバレをしてしまいましたが、まだ秘密があります。

 良かったら読んでみてください。

 

  益田ミリさんの新刊『かわいい見聞録』(集英社)にも栞のことが書いてありました。

 

 『語源大辞典』では、しおりは「もとはシオル(枝折る)から。

 木の枝(し)を折り、道しるべとした」。

 『平凡社 大百科事典』では「読みさしの本に挟んでおく栞もまた

 帰路の道しるべの一種である。ただしそれは、読者が読みさしの本に

 帰るときの道しるべである」。

 (益田ミリ/著 『かわいい見聞録』集英社より)  

 

栞イラスト   図書館にはこれらの辞典・事典がないので直接

     読むことはできませんが、なんてロマンチックぴかぴか(新しい)

     な表現でしょうか。

   そういえば、ヘンゼルとグレーテルにも、

                               枝を折って道しるべにする本があったっけ…。

 

 栞がないと、「あれ?どこまで読んだっけ?」と、捜すことも度々です。

 製本の専門用語では、本に直接ついている平織の紐の栞を「スピン」と言います。

 単行本にはだいたい付いていますが、文庫では付いていないのが殆どです。

 でも、新潮文庫にはついているんだexclamationと気が付いた時、ちょっと嬉しく思いました。

 いろいろな人が貸出される図書館の本だからこそ、たくさんの人の道しるべになってきた栞。

 これからもみなさんの楽しい、幸福な道しるべとなりますように。