《絵画とは色彩、輪郭および面のうちにさまざまの関係を打ち立てる芸術である》
これはセザンヌの有名な言葉ですが、この言葉からもわかりますように、絵画とは感覚の表現であり、自己の実現であるというのが彼の確信であったようです。つまり一人の画家の個性がものを創り出すのであって、画家の向かい側にあるものを受動的にカンヴァスに移されるのではないということです。このことは現代絵画にとっては常識ですから、彼が《現代絵画の父》といわれるのもうなづかれます。この絵は彼の晩年に属する代表的な作品です。斜め上に置く眼のアングルといい、赤色から黄色への転調によってその形と量感がみごとに示される果物といい、ものが今にも手前に転がり落ちそうな、写真を超えた実在感があります。