ルソーがいつ頃から絵を描きはじめたかは明らかではありません。49歳になるまで彼はパリ市税関の下級官吏でした。彼は、自ら職業的画家であることを望みながらも正式な指導は誰からも受けることもなく、思うまま自由に描き続けていました。彼は、つとめて日常生活の場面に題材を求めていますが、ご覧のように人物でも草でも木でも空想的なコンポジションにおきかえられ、その幻想的な形とあいまって一種独特の画面をかたちづくっています。それは彼が正しい絵画技術の修練を経ていないということもありますが、それだけに児童画を見るときのような純真でいつわらない心情が画面から見る者に伝わってくるようです。