ルノワールとしては珍しい花の絵です。といっても彼が花の絵を描かなかったということではありません。女と花とは彼が生涯愛しつづけたモチーフであったといわれます。ただ、ものの形そのものよりも、光の効果を重んじた印象派の画家としては、これはまたなんと入念な描きこみでしょう。もちろん、彼は淋しい一輪の花ではなく、常に花束をテーマにしていますが、そこには既に、光による色彩の豊かさを意図していたのかも知れません。或いは、響きあうこの色彩のハーモニイは、少年の頃、陶器の絵付け職人の修行をしていたということからきているのでしょうか。制作年代を正確に決定することは、難しいですが、1860年代つまり若い頃のものではないかと思われます。