ルノワールというと人びと、あの豊満に光り輝くヌードの女性像を連想しがちです。しかし、彼にはこの絵にみられるように、すぐれた着衣の女性像も決して少なくありません。川辺にテラスに憩うこの女性は、彼がしばしば滞在したことのあるシャトウの宿の娘アルフォンシーヌ・フルネーズだといいます。場所はグルヌイエールのルノワールの家です。夏も近い頃でしょうか。むせかえるような草いきれが降り注ぐ太陽の光にキラキラと輝いています。印象派は光の画家でした。この一見無造作に見えるタッチの中にも、ゆれ動きそして移ろいゆく光の微妙な変化が、見事にとらえられています。ルノワールが48歳の時の作品ですから、印象派としては最も円熟したころのものといえます。