《私はカンヴァスに絵具をつけることで楽しみながら暮らしてきた》これは作者ルノワールの言葉ですが、私たちは、このさりげない言葉の中にも、彼が極めて優れた色感の画家であったことを改めて知らされ、その純度の高い色調の対比から生み出される新鮮な画面を重い浮かべるのです。この作品も、テラスに憩う母娘のきわめて日常的な一情景ですが、ふり注ぐ陽の光が樹々の間をゆれ動き、後景のボートの浮かぶ水の面も光がふるえているようです。このようなチカチカと画面をまばゆく揺れ動く光の表現はルノワールの得意とするところでした。いうまでもなく、彼は戸外の光に注目した《印象派》の一人ですが、彼は自然だけにとどまらず、人物もその光の効果を探し求めています。