ルノワールといえば誰でも、あの豊満な光輝く女性の肉体を思い浮かべるに違いありません。ですが、彼にはすぐれた着衣の女性像も決して少なくありません。この絵もその一つです。最も、この絵は《舟遊びをする人たちの昼食》と題する大作の一部です。いうまでもなくルノワールは印象派から出発しました。モネにはじまるその印象派は、自然の中にまばゆく揺れ動く微妙な外光を愛し、その瞬間瞬間の光を画面に移すことを試みたのでした。
この絵はセーヌの川辺のレストランの一隅で小犬をあやす一女性の一カットですが、、その赤、黄、青の原色が明るい陽光の下に快く響き合っています。ことに卓上のグラスにゆれ動く光の巧みな描写に注目して下さい。