安定した職業と恵まれた家庭を持つ中年の一紳士が、ある日突然、その全てを捨てて絵画などというあてにならない仕事に転身したとしたらどうでしょうか。ところが、それがゴーギャンなのです。やはり、そこに待っていたのは輝かしい制作の日々ではなく、貧窮と屈辱の生活でした。彼は、さらに新しい境地を求めて1881年南太平洋のタヒチ島にのがれ、文明に毒されない健康で明るく素朴な生活を楽しみ、その生活を生き生きと描き続けました。そこには原色に彩られた装飾的な構図と不健康な都会生活には求めようもないたくましい生命力がみなぎっています。モデルは彼が島で一緒に暮らしていた土人の女だともいいますが、彼自身も、同じ南のマルケサス島でその生涯を終えたといいます。