印象派の画家たちの中で、フランスの風景を描くのに最もふさわしい感覚をもっていたのはピサロとシスレーであったといわれています。ところが皮肉なことに、二人ともフランス人ではなかったのです。ピサロはさておき、シスレーはパリで生まれほとんどその生涯をフランスで過ごしましたが、両親ともにイギリス人でした。この絵のモレ=ロワンはパリの近郊でシスレーの言葉によりますと《かなりピトレスク(絵画的)なところ》であったようです。彼は1882年にここに移り生涯もここで終えています。樹木の梢や草むらの影が水面にきらきらと瞬き、川面が画面の奥にひきこまれていくあたりに青空が大きく開かれる。この空と水と大地のたたずまいは、風景画家シスレーの得意とするところでした。